710年(和銅3年)、「奈良・藤原京」から同じく奈良の「平城京」へ都が遷都することとなりました。
その折、当時、朝廷でもっとも権力を保持していた「摂関・ 藤原氏」は、「平城京」鎮守のために社を建て、神様をお祀りすることにしました。
その神様というのが代々藤原氏に縁のある、一族の祖先神と云われる「武甕槌命(タケミカヅチ)」になります。
この武甕槌命を都の鎮守として、お祀りすることにしましたが問題が出てきました。
その問題とは、「武甕槌命(タケミカヅチ)」は遠く常陸国(現在の茨城県)の鹿島神宮に鎮座されていたのです。
如何様にすべきか考えていたところ、なんと!!驚くことに遥か常陸国から「純白の鹿」の背に跨った「武甕槌命」が、新都である「奈良・平城京」へ参上したのです。
その後、藤原氏は「武甕槌命」を、すぐ様お祀りするために、「春日の地(御蓋山・みかさやま)」に社を建てました。
そしてこの時「武甕槌命」が背に跨ってきた鹿も「武甕槌命」同様に「神の使い(神使)」として、この社で崇め、現代に至るまで大切にお祀りされてきたということです。
ちなみに平城京鎮守のために建てられたこの社は、現代では「春日大社」という名前で親しまれています。
・・と、いうことで、奈良の愛くるしい鹿さんたちは、古くから神の使いとされ、戦時中など一時期を除いては、大切に大切に守られてきたというワケです。
そして春日大社と言えば武甕槌命の他、3神を一緒にお祀りしている神社で、これら3柱の神様と武甕槌命を含めて総称したものが春日大神になります。
春日大神(4柱神)
- 経津主命
- 天児屋根命
- 比売神
- 武甕槌命
奈良公園に鹿は、いったい誰が管理してるの?
「奈良公園の鹿は野生」です。そして「天然記念物に指定」されています。
したがって、飼育されているわけではなく、法律によって保護されているだけであって、基本的に「管理者」はいません。
しかし、奈良公園には「奈良の鹿愛護会」という団体があります。
この「奈良の鹿愛護会」という団体は主に以下のようなことを行っています。
- 鹿の保護のため調査や研究
- 病気や怪我をした鹿を鹿苑へ収容
- 出産を控えた雌を捕獲して鹿苑へ収容
- 鹿苑(ろくえん)の管理(鹿の世話)
- 雄鹿の角切り
- 奈良公園の付近周辺の見回り
- 鹿を捕獲して鹿苑へ収容
- 死鹿の処理
- 問い合わせ対応
奈良の鹿愛護会は何者?役割やどこまで鹿の所有権・占有権を持っているのか?
奈良の鹿は「天然記念物」指定を受けていますが、実のところ天然記念物の申請書には所有者が「春日大社」の名前で登録されています。
実は、1984年(昭和59年)まで奈良の鹿は春日大社の所有物であり、奈良の鹿愛護会が占有者(管理者)でした。
1960年代になると鹿による農作物被害が深刻化し、経営不振に陥る農家も出没し始めました。これに端を発し、いったい誰が奈良の鹿の正式な所有者で、誰が占有者なのか?を明確にする裁判が執り行われいてます。
この結果、「奈良の鹿は無所有者の単なる野生の鹿である」という判決が出され、この様相が今日に至っています。
ただ、この問題に関してはまだ完全な解決を迎えたとは言いきれず、現在の状況としては奈良の鹿愛護会が表面的には占有者になっています。
現に、未だ残る農作物の被害に関しても奈良の鹿愛護会がクレーム対応し、さらに死鹿の処理や鹿の生態管理までも行なっています。
「鹿の角切り」は奈良の鹿愛護会のメイン行事!
角を切らなくても鹿は生きていけますが、立派な角が文化財を傷つけたり、鹿同士で傷つけ合ったり、人間に危害が及ばないよう、「角切り」は毎年行われています。仕方ないですね。
この「鹿の角切り」ですが、江戸時代からの伝統の継承という意味もあるのだそうです。
- 関連記事:鹿の角切りをする理由や日程・内容
他にも奈良公園の鹿を世話(管理)している・・「虫」がいる??
奈良公園の鹿は野放しです。そして、奈良公園の鹿は1000頭以上。
生き物である以上、物を食べれば、当然、クソを垂れ流します。
しかし、そのクソを1つ1つかき集めるような人もなければ、職業もありません。
じゃあ、誰も世話をしないとしたら・・
「 クソまみれ かよ 」
と、相成ります。
・・コホンっ!
【参考】奈良公園の鹿フンの積量
- 年間約330トン
- 絶対乾燥重量:約79トン
しかし、いったい、どうしたことでしょう。
奈良公園には、何千頭もの鹿たちのフンが貯金されていません。
いったい、誰が使い込んでいるのでしょう??
そのフンは・・・なんと!!
「フン虫」と呼ばれる「黄金虫くん(コガネムシ)」たちが処理してくれていたんです!!
⬆️奈良戦隊「黄金虫くん・1752号」
これは驚きです!!
鹿たちばかりが目立ってしまい、地面で一生懸命働いている「黄金虫くん」たちを気にかける人はいませんよね。
そして、なんと!!この「黄金虫くん」・・この奈良公園には結構たくさん生息しているそうなんです!!
奈良公園の黄金虫くん(フンころがし)の種類
日本に生息するフンコロガシの種類:約160種類
奈良公園に生息するフンコロガシの種類:年間約46種類(奈良市全体で61種類)
例:マグソコガネ属、オオセンチコガネ属、マメダルマコガネ属、ダイコクコガネ属、エンマコガネ属、コエンマコガネ属、クロツツマグソコガネ属…etc
大きさ
マグソコガネ:約5ミリ、ダイコクコガネ属:約20ミリ〜30ミリ
だから人によるお片付けは不要っ!!
さらに、他にもこんな感動のストーリーがあります。
驚くべき奈良公園の「自然の浄化サイクル」
実は鹿たちのフンは最終的に鹿たちが困らないよう鹿たちの主食である芝(芝生)が育つ栄養素にもなっています。
しかし、実はこんな驚くべき自然の浄化システムが存在していたのです。
まず、鹿たちが芝などの食物を食べて豪快に元気なクソ(フン)を垂れます。
その鹿グソを今度は「奈良戦隊に所属する黄金虫くん」たちが登場してきて、一気に平らげます。
だた、コガネムシくんたちもケツ穴からウンコを射出しますので、コガネムシくんたちのフンも芝の上にポコっと落っこちるわけです。
実は芝にとって、この奈良戦隊に所属するコガネムシくんのKOGAフン(訳:コガフン=コガネムシのフン)が最大の栄養だったのです。
ここまでお話しすれば理解できたかと思いますが、見事な自然の浄化システムが構築されているワケです。
奈良公園の自然の浄化システム
鹿たちが芝を食べる
↓
鹿たちがフンをする 鹿G・U・S・O〜
↓
そのフンを奈良戦隊に所属するコガネムシくんたちが食べる
↓
奈良戦隊に所属するコガネムシくんたちもフンをする K・O・G・Aフン〜
↓
奈良戦隊に所属するコガネムシくんたちが垂らしたフンが芝の栄養になる K!O!G!Aフン〜
↓
芝がよく育つ
・・・繰り返す
という具合に、この奈良公園では人の目に晒されることなく、自然の浄化の循環がチャント機能しているんですね。
つまり、野生の動植物たちは彼らで勝手にうまくやっているということになります。
むしろ、鹿が「芝」を、黄金虫くんが「SIKAグソぉ〜」を食べてくれるおかげで、芝刈りの手間と「S・I・K・Aグソぅぉ〜」拾いなどの人手を省けるんですから、「鹿」や「黄金虫くん」たちに逆に人間が世話されているようにさえ感じられます。
とはいえ、たくさんの鹿が今ものびのび暮らせているのは、周辺のお店や住民の理解と努力の賜物。
観光で訪れる私たちもルールを守って大切にしたい文化ですね。
ちなみに鹿たちのしぅぃ・かぁ・グゥ・SO〜 オぅイェイ!・・を、人間が全部回収してさらに芝の手入れも人間がすべて管理すれば一体いくらぐらいのお金がかかるのかご存知ですか?
なんとぉぅぉぅぉぅ!!!ザッと100億円はかかるそうです。ウっひゃ
ただし、まるっきり奈良戦隊所属のコガネムシくんたちにお任せするのではなく、コガネムシくんたちも冬季になれば活動が鈍ることから、適度に人の手で芝生に肥料が与えられたり、人の手で鹿グソが片づけられています。
鹿糞だらけの奈良公園になぜハエがいない??
しかし、いくら奈良戦隊所属のコガネムシくんたちが、私の戦闘力は53万です。・・状態だとしても、完全に鹿グソを処理しきるまでには時間がかかります。
その間にハエの一匹でも鹿グソに集りそうなものですが、そういえば不思議と奈良公園でハエを見た記憶がありません。
鹿の周囲を元気にブンブンと飛び回っている姿も見たことがありませんし、撒き散らされている鹿GUSOの周辺にも不思議とハエが飛び回っていません。
実はこれにも理由があって・・なんとぉぅぉぅ!!察しの良い方ならすでにお分かりの通り、奈良戦隊の方々が、ハエが鹿GUSOに産み落とした卵も一緒に食べて下さっているからです。
コガネムシくんたち・・本当に頼もしい。タッちゃん南を甲子園に連れてって
なお、コガネムシくんたちは鹿や人があまり活動しない夜に姿を表して密かに処理してくれています。
余談ですが、アメリカやオーストラリアの巨大牧場では、わざわざコガネムシ君をインドや中国などから輸入して牧場に住まわせているんだそうです。
理由としては、牛は自らが垂らしたクソで育った牧草は口にしないという何とも贅沢で殿な習性があり、この条件を綺麗サッパリ消し飛ばしてくれるのがコガネムシ君の存在だったんですね。
おわりに・・
一般財団法人 奈良の鹿愛護会からのお願い
・鹿せんべい以外のエサはあげないで!
・子鹿には近寄らないで!(母性本能の強い母鹿が近くにいるため)
・発情期の雄鹿には近寄らないで!
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